研究概要 |
研究計画調書で述べたように平成6年度はDyAgの強磁場磁気構造の決定を行い、しかるべき成果をあげた。DyAgは強い4重極相互作用と結晶場のせいですべてのスピンが[111]方向を向き(ππ0)対称性をもつトリプルq構造を持つ。これに[001]方向に磁場をかけると7.6Tと10.2Tでメタマグ的磁化のジャンプが観測される。それぞれの磁場領域での磁気構造に関してMorin達によってモデルが提唱されたが、それが正しいかどうか、またそれが正しくなければ、正しい構造は何か、中性子回折で調べることが目的である。第1相と第3相での磁気構造は提唱されたモデルで問題ないが、第2相での構造は明らかに実験結果と合っていない。すなわちそのモデルでは第2相でも強度はゼロにならなければならないのに実験では明らかに回折強度が観測される。従ってこのモデルで示された構造は間違っていることになる。第2相に関して5個のモデルが考えられる。これらのモデルについて構造因子を計算し、磁気構造を決定するためには、(1,1,0)、(1/4,3/4,0)、(1/2,0,0)、(3/2,0,0)、(1/2,2/3,0)、(1,0,0)、(1,1/2,1/2)と(3/2,0,1/2)の8個の指数の反射を第2相に該当する磁場中で調べればいいということになる。これらの内最初の6個の指数について実験を行い、3個のモデルが残されたがその内どれが正しいか調べるためには(1,1/2,1/2)と(3/2,0,1/2)の指数について実験を行わなければならない。試料の[001]軸を磁場の方向から25°傾け、磁場を[113]方向にかけるようにし、散乱面を[301]-[211]にもっていき実験を行った。その結果我々が新たに提唱した C-モデルが第2相での磁気構造であると結論する事ができた。
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