研究概要 |
面心正方晶ThCr_2Si_2型希土類金属間化合物CeRu_2Si_2は,20mKまで常磁性のフェルミ液体状態を保つ重い電子系化合物であるが、70K以下から短距離反強磁性相関が発達することや、磁化の容易軸方向でメタ磁性転移的な磁化過程を示すことから、この化合物は磁気秩序発生の寸前状態にあると考えられる。本研究では,Ruサイトの4d遷移金属T置換効果に焦点を当てて,T置換による高濃度近藤効果,フェルミ液体現象,磁気秩序発生およびメタ磁性転移の系統的変化に関する実験研究を行った。以下にその成果を列挙する。 (1)4d電子がRuより多い元素Rh,Pdで置換した系では、T_Kおよびメタ磁性転移磁場H_Mの値がともに低下する。T_Kの濃度依存性は、極小を示したあと、増大に転ずる。これに対し、4d電子がRuより少ない元素Moの置換ではT_K、H_Mとも濃度の増加とともに増大する。 (2)RhおよびPd置換では、濃度の増加とともに6K以下の低温で反強磁性的な磁気秩序が誘起され、ふたたび消失する。この磁気秩序発生に伴い、新たな磁化の弱い飛びがH_Mより低磁場で観測されるようになる。 (3)T_KのT置換変化はどの元素Tにおいても4d電子数でよくスケールされ、T_Kが低下すると磁気秩序が発生する。一方、H_MのT置換変化はTの濃度でよくスケールされる。 (4)Rh・Pd置換において、μSR実験から微視的に反強磁性的な磁気秩序発生が確認された。 (5)CeRu_2Si_2のμSR実験から、Ceモーメントの動的ゆらぎの時間が評価された。その結果50K以下でゆらぎの相関時間が低下し、10K以下でほぼ一定になることが分かった。 (6)Rh・Ph置換における常磁性と反強磁性の境界濃度領域で、非フェルミ液体現象が観測された。
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