研究概要 |
希土類金属間化合物の中には実用磁性材料など大きな磁気的異方性を有するものが知られているが、この異方性は結晶場を考慮したsingle-ionモデルで理解されている。同形の希土類化合物と比較するとアクチナイド化合物の磁気的異方性は極めて高いことが少なくなく、5f電子の化学結合の方向異方性に因ると考えられている。本研究ではウラン化合物の磁性材料としての可能性を検討することを目的として、3元系U-Fe-X(X=Ge,Al,B,Sb)の物質検索と物性評価を行った。物質探索は、目的の化学量論量の物質をアーク炉で調整してas-castとアニールした試料のSEMによる組織観察と組成分析、X線回折及びDTA分析により行った。 U-Fe-Ge系では新規化合物としてUFeGeが見いだされた。この化合物は斜方晶として指数付け可能であるが比重の測定結果とは矛盾しており、TEMを用いた電子線回折法による結晶系の同定を計画している。またU5Fe7Ge3近傍にも未知の相が存在することが判明したが、その組成については更に今後検討が必要である。U-Fe-Al系では、六法晶として指数付けできるUFe5Al3が見いだされたが、組織観察によれば1%以下ではあるが他相を含んでいるため、現在その量論比について検討中である。U-Fe-Sb系では、体心立方晶のU3Fe3Sb4と単純正方晶のUFeSb2が見いだされ、それぞれY3Au3Sb4型、AsCuSiZn型として粉末X線回折強度が説明できることが判明した。しかし、U-Fe-B系では新しい相を見いだすことはできなかった。 多結晶UFeGeの熱磁気曲線によれば、UFeGeは約20Kで強磁性に転移するが、1KOeでの磁化は約0.01μB/fuと極めて小さい値を示す。5Kにおける磁化は低磁場で急激に増加した後、最大磁場55KOeまで飽和ぜずにほぼ直線的に増加する。
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