研究概要 |
有機分子が秩序的に集合して特異な分子配向を形成すると長距離にわたる電子エネルギーの移動が可能となり、それに基づく新たな分子材料の設計が期待される。しかし、有機分子の配向を思うように制御して品質の良い会合体を作製する技術はいまだ十分には確立されていない。我々はこれまで、二分子膜や気液界面単分子膜、LB膜などの分子集合体に着目しその二次元特性を用いた分子配向制御を行ってきた。例えば、二分子膜の荷電表面へ反対電荷を持つ色素や高分子が特異的に吸着することを見いだした。とりわけ、ジアルキルアンモニウム塩単分子膜の荷電表面にアニオン性のシアニン色素が静電吸着し、J-会合に特異的な吸収をしめす単結晶性の二次元複合体が形成されることを見いだした。そこで本研究では、鋳型となる単分子膜の分子構造と形成された色素会合体構造の相関性に基づく二次元結晶工学を確立し、二次元分子集合体を用いた分子材料の設計指針を明かにした。 1.カチオン性単分子膜はアニオン性シアニン色素と気液界面にてイオン対を形成し,界面を鋳型として数十ミクロンにも及ぶサイズのそろった矩形の発光体を形成する。吸収ならびに発光スペクトルの長波長シフトから,この会合体は色素のJ会合体であることが明らかになった。 2.アニオン性単分子膜とカチオン性シアニン色素の場合には吸収スペクトルの比べて著しい短波長シフトがおこり、H会合体が形成された。 3.単分子膜-色素複合体LB膜で修飾したITO電極は光電気化学応答を示した。光照射によってカソード電流が生じており、アニオン色素の方がカチオン色素よりも大きな値を示すことが明らかになった。
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