研究概要 |
3次元的な乱雑系である多孔質ガラス,1次元準周期系であるフィボナッチ多層膜,また,一次元の周期的なフォトニッククリスタル及び,その中央に欠陥を入れたものにおける,光の状態について調べた。まず,3,000Åから10,000Åのの平均細孔径を持つ多孔質ガラスを用いて,その中で多重散乱を受けている光の状態を,コヒーレント後方散乱,飛行時間測定,透過スペクトルならびに,白色光干渉計を用いたサブピコ秒時間分解測定によって,調べた。次に,以下のようないくつかの1次元的な誘電体構造を,シリカとチタニアという屈折率の大きく異なる2種類の材料を交互にガラス基板上に蒸着することによって作成した。i)1次元準周期系であるフィボナック多層膜。ii)周期的なフォトニッククリスタル。iii)周期的な構造の中央の層を別のもので置き換えることにより欠陥を作り込んだ3種類の多層膜。この3種類は,中央の欠陥の周りにできる光の欠陥準位として,アクセプター準位,ドナー準位,及びミッドギャップ準位をそれぞれ持つ。以上の1次元構造における光のバンド構造を調べるために,分光器を用いて透過スペクトルを測定し,また,既に作成してあるフーリエ変換白色光干渉計を用いて,透過光の位相を測定した結果,理論的に予想される,理論的な分散曲線に近いバンド構造が得られた。さらに,中央の欠陥層に非線形光学媒質をドープした試料を作成し,透過率の非線形性を測定した結果,予備的ではあるが,非常に強い非線形性が観測された。これは,光の局在モードにより,中央層における光の強度が増強されたことによるものであり,このようなフォトニッククリスタル構造が,幅広い応用を持つことを示唆している。
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