申請者は調節性エキソサイトシスの分子機構を明らかにする目的で、膵臓の細胞を用いて分泌顆粒の膜上に特異的に存在する分子群(ZAP)の構造と機能を解析してきた。一方、Rothmanグループは、脳細胞の分泌顆粒のエキソサイトシスにNSFやSNAPと呼ばれる分子の関与を主張している。これらの分子群が調節性エキソサイトシスにおいて、どのように機能分担しているのか、あるいは分子間の相互関係について検討した。 (1)膵臓チモ-ゲン顆粒膜分子群(ZAP)の機能と特異性・一般性の検討:これまでに発見した3つの分子(ZAP75、ZAP47、ZAP36)が脳細胞のシナプス小胞でも発現しているか、RNA、タンパク質レベルで調べたところ、ZAP47は脳で微量発現していたが、ZAP75、ZAP36は膵臓特異的であった。 (2)NSF/SNAP機構の一般性の検討:前項(1)を補完する実験として、脳のシナプス小胞の分泌過程に関与するとされるNSFおよびSNAPが、膵臓腺房細胞のチモ-ゲン顆粒の調節性エキソサイトシスにも関与するか否かを、cDNAクローニングしたマウスのNSFおよびSNAPアルファ、ベータ、ガンマと精製したチモ-ゲン顆粒とをもちいたインビトロ実験で検討したところ、膵臓アピカル輸送でのNSF/SNAPの関与は検出できなかった。 (3)膵臓腺房細胞におけるZAP36レセプターの探索:膵臓チモ-ゲン顆粒膜上にZAP36レセプターとして機能しうる分子をwest-western法により検索したところ、9つの候補クローンを得た。
|