酵母Saccharomyces cerevisiaeを宿主に用いて異種有用蛋白質の分泌生産を試み、酵母キラー蛋白の分泌シグナルを用いてマウスα-アミラーゼの分泌系を構築してきた。種々の分泌シグナルを用いることにより、分泌効率に違いがみられ、特に、キラープレプロシグナルを用いた場合には発現されたアミラーゼのうち約10%が分泌されただけで、残りの90%は菌体内に留まっていた。これは、アミラーゼの末端アミノ酸配列分析、ショ糖密度勾配遠心による細胞分画、蛍光抗体法などの手法により小胞体に蓄積していることが示された。小胞体内には異常蛋白を分泌させないという品質管理のメカニズムがあり、小胞体内に局在するHSP70であるKAR2遺伝子産物(BiP)がその重要な因子の一つと考えられている。そこで、KAR2遺伝子に種々の変異を導入し、アミラーゼの分泌に対する影響を調べた。まず、染色体KAR2遺伝子の発現をGAL7プロモーターにより調節可能にし、大腸菌mutD株により変異を導入したKAR2遺伝子に依存したアミラーゼの分泌量をでんぷんプレート上のハロ-の大きさで検定した。今までのところ、分泌量が増加した株は見つかっていないが、分泌量の低下した株を数株分離して解析した。また、Kar2蛋白のC末端付近の欠失変異株を作製し、どこまでが細胞の増殖に必要な領域かを検討した。なかで一株温度感受性を示す株を分離し、その構造を明かにした。
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