研究概要 |
神経伝達物質の放出においてシプナス前部の蛋白の機能が最近明らかになってきている。例えば、シナプシン1はシナプス小胞の近傍に存在する約70kdの蛋白であり,シナプス小胞同士及びシナプス小胞をシナプス前部のアクチン線維につなぎとめておくことで、シナプス小胞からの神経伝達物質の放出を調節していると考えられている。近年、シナプシン1を始めとして、シナプスに局在する蛋白の遺伝子のいくつかが単離され、培養細胞等を用いた実験によってこれらの遺伝子の発現がシナプス形成自体にも重要であることが示されている。本研究は上記の点を検討するために、gene targetingを用いて作成したシナプシン1欠失マウスを解析する事を目指している。最近シナプシン1欠失マウスの解析が他のグループによって報告され、シナプシン1の欠失によって、ある種の短期記憶に障害がおこることが明らかとなった。しかしこの研究ではシナプス前部の構造の解析は十分になされておらず、当研究室において構造の解析を中心にした新しい角度からの検討を加えることができる。我々はシナプシン1遺伝子のゲノムDNA断片からtargeting vectorを作成し,それをES細胞に電気穿孔法によって導入して相同組み換えをおこしたES細胞を数line手に入れることができた。それらの細胞からgermline chimeraの作成に成功したため,現在,chimeraの仔を交配しシナプシン1欠失マウスを作成しているところである。解析予定の項目として(1)急速凍結ディープエッチ法を始めとする電子顕微鏡法による、シナプス及び細胞骨格系の微細構造の変化の解析。(2)変異マウスからの初代培養細胞又は神経組織切片を用いたシナプス伝達の電気生理学的解析。(3)変異マウスの行動学的解析(4)複数のシナプス局在蛋白遺伝子欠失マウスが得られた場合、これらを交配することで、double mutationが入った個体を作製し、同様の方法で解析する。等を予定している。
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