研究概要 |
本年度はヒトの脳からグルタミン酸トランスポーターのサブタイプの一つ(hGluT-1)を単離し、その構造・機能解析を行なった。hGluT-1は542個のアミノ酸からなる膜蛋白質で、6個の膜貫通領域を持ち、ラット、マウスのhGluT-1とは96.9%,96.7%の相同性があった。hGluT-1の活性はNa+依存性で、グルタミン酸に対する親和性は78.4μmであった。hGluT-1の活性はグリアタイプの阻害剤により抑制された。hGluT-1のmRNAは脳に最も多く存在し、少量ではあるが、心・肺・筋肉などの末梢組織にも存在した。更に、hGluT-1と神経変性疾患との関係を解析するため、hGluT-1の遺伝子座は5p13にあることを明らかにした。疾患との関係は、現在解析中である。 また、マウス脳から3種類のグルタミン酸トランスポーター(MEAAC1,MGLUT1,MGLT1)を単離し、それらの構造・分布の解析を行なった。これら3種類のグルタミン酸トランスポーターはアミノ酸レベルで52-56%の相同性を示し、一つのスーパーファミリーを形成する。MGLT1は脳のみに存在するが、MGLUT1とMGLT1は脳だけでなく末梢組織にも存在した。現在、これら3種類のグルタミン酸トランスポーターをそれぞれ発現している細胞株を作成し、詳細な薬理学的特性を解析中である。更に、これらグルタミン酸トランスポーターを利用し、アフリカツメガエル卵母細胞を使った発現クローニングによりシナプス小胞膜に存在するグルタミン酸トランスポーターの単離を試みているところである。
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