研究課題/領域番号 |
06254207
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下濱 俊 京都大学, 医学部, 助手 (60235687)
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研究分担者 |
竹縄 忠臣 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40101315)
木村 淳 京都大学, 医学部, 教授 (10204976)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / 脳内蓄積物質 / ホスホリパーゼC / デルタ / 血小板 / グルタミン酸 / 細胞死 / 神経原線維変化 |
研究概要 |
細胞膜にはイノシトールリン脂質を特異的に分解してジアシルグリセオールとイノシトールリン酸を生成するホスホリパーゼC(PLA)が存在する。PLCはさまざまな外界情報物質に依存した細胞応答系に関わるシグナル変換酵素である。本研究の目的はアルツハイマー病(AD)とイノシトールリン脂質代謝異常の関係について明らかにすることにある。連続切片を用いた免疫組織化学的検討で、PLC-δ1はtauに対する抗体で認識されるアルツハイマー神経原線維変化(NFT)に異常に蓄積していた。免疫電顕では、大部分はNFT内のamorphous granular componentに、一部はfilamentに局在していた。Western blotting解析では、AD脳の可溶性分画で対照群に比べPLC-δ1量が有意に増大していた。一方、AD脳膜分画でPLC-β1およびPLC-γ1量が有意に減少していた。膜分画のPLC-δ1量には両群間で有意な差は認められなかった。AD脳可溶性分画のPLC-δ1の比活性は対照群に比べ有意に低下していた。Western blotting解析では、AD患者血小板の可溶性分画で対照群に比べPLC-δ1量が有意に増加していた。その他のアイソザイム量に有意な変動は認められなかった。一方、AD患者血小板の可溶性分画でPLC-δ1の比活性は対照群に比べ有意に低下していた。低濃度(25μM-200μM)のグルタミン酸の短時間投与により、濃度依存的に、ラット培養大脳皮質ニューロン細胞質内のPLC-δ1免疫活性の増大が認められた。細胞外カルシウムイオンの除去あるいはNMDAレセプターアンタゴニストのMK-801の投与により、グルタミン酸によるPLC-δ1免疫活性増大の有意な減少が認められた。nitric oxide(NO)合成酵素阻害剤の同時投与によりグルタミン酸投与によるPLC-δ1免疫活性の増大は有意な減少を示した。以上の結果より、アルツハイマー病の脳内異常蓄積物質の形成機序にPLC-δ1異常が関与している可能性が示唆された。グルタミン酸におけるニューロン死とPLC-δ1異常蓄積との関連を示唆する所見は、さらに検討を要する興味ある問題である。
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