研究概要 |
RNAの特異な構造が種々の機能に関与しているらしいことが明らかにされつつあるが,その機能発現のメカニズムを理解するには立体構造およびミクロな構造の知見が不可欠であり,またそれによって機能の改変や新しい機能を有する分子の設計も可能となる.我々は機能発現の基本となる部分の構造を明らかにするためにX線解析を進めている.ハンマーヘッド型リボザイムはその基質鎖を含めて2次構造が仮定されている。構造を明らかにする立場から、(1)一定の立体構造を維持するために基質鎖を常に必要とするのか,(2)基質鎖なしでも活性部分が一定の構造体を形成いているのか,という問題を解決する必要がある。本年度は結晶化と並行して行った構造組成の実験から,基質結合前後での挙動を明らかにした.2種類のハンマーヘッド型リボザイムについて,それぞれを構成する3本のRNA鎖を種々の組み合わせで混合して,ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動の実験を行った.これらの結果から、どちらのリボザイムも,(1)基質がなくても複合体を形成すること,(2)基質鎖を加えると3者の複合体を形成すること,(3)基質鎖同士がダイマーを形成している場合でも加熱処理すると3者複合体を形成すること,が明らかになった。したがって,ハンマーヘッド型リボザイムは,タンパク質酵素と同じように,活性部分が一定の構造をもっていて,基質が来ると結合し分解反応を起こすという概念が成立することが解った。これらの知見に基づき,ハンマーヘッド型リボザイムの酵素部分とこれに基質鎖を加えた3者複合体の結晶化実験を行った結果,両方のケースについて結晶を得ることができた.特に前者についてはX線回折実験に適した単結晶が得られたので,現在X線解析を進めている.
|