研究概要 |
循環的電子伝達反応は,光合成により作られた還元力の分配調節(NADPH/ATP比)を司ると考えられている。今年度は,塩ストレス適応機構としての循環的電子伝達系の遺伝子発現制御機構に焦点をしぼり研究を進めてきたが,同時に変調分光ケイ光法(PAM)および光音響分光装置(PAS)の開発などのin vivoでの光合成活性法の確立にも取り組んできた。 1)シアノバクテリア(Synechocystis sp.PCC6803)のNADHデヒドロゲナーゼ遺伝子を不活性化させたmutant(M55,ndh K)の光化学系I,光化学系II,および循環的電子活性を測定したところ,wild型と比較して塩ストレス適応性が低下することが明らかになった。 2)光音響分光装置(PAS)を作製した。この装置を用いて,好塩性らん藻(Aphanothece halophytica)の光エネルギー変換効率の波長依存性を測定したところ,高塩濃度下で循環的電子伝達活性が高いことを示す結果が得られた。 3)各種塩濃度(0.25M-2.0M)に適応したAphanothece halophyticaのフラッシュによる解析から,光化学系IIからの電子の流入をブロックした条件での光化学系Iへの電子の流入量は,塩濃度が高いほど多いことが明らかになった。 4)Aphanothece halophyticaは、塩濃度の急激な変化にともない光化学系IとIIに対する光エネルギーの集光性が変化することが明らかになった。 5)各種塩濃度におけるNADHデヒドロゲナーゼ蛋白質の蓄積量を抗体を用いて検討したところ,Aphanothece halophyticaのndh K,ndh I,ndh J蛋白質の蓄積量は塩濃度にあまり依存しないことが明らかになった。
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