研究概要 |
我々は,機能モジュールのモデルとして"隠れユニット"を加えた相互結合型神経回路網を考え,これを多数用いてこれらを互いに連結した多重相互結合型回路網(MMNN)と,従来から我々が提案している大規模櫛型ニューラルネットCombNET-IIを組み合わせたモデルを提案している.このモデルでは,CombNET-IIを,入力刺激を分類し入力刺激に対応した直交パターンを生成するために用い,MMNNを,その直交パターンとすでに記憶されている上位概念との相互干渉により不完全な入力情報から不足した情報を補い完全な上位概念を連想させるために用いる. 本年度は,このモデルを手書き文字認識に適用した.今回の実験では,単語パターンとして,愛知県の市名と郡名45個を用いた.実験の結果,CombNET-II単独では誤認識した場合でも,MMNNと組み合わせることにより正しく認識できることが明らかとなった.本モデルにおいて,通常の文字の認識であ99.8%の認識率が得られ,文字の特徴量に30%のノイズを加えた場合,CombNET-II単独では37.4%であるにもかかわらず,本モデルによれば89.4%もの認識率が得られた. 本モデルは,まず感覚器官(視覚)から入る刺激の特徴抽出(外郭寄与度方法特徴)を行い,その結果を低次情報認識回路網(CombNET-II)に伝達し,基本となる情報単位(単字)の認識を行い直交パターンを生成し,それを高次情報連想回路網(MMNN)に入力刺激として与え,知識モジュールに蓄積された情報との相互干渉により不完全な情報からでも最も関連のある上位概念(単語,都市名,地名)などを連想しようとするものである.本モデルは,脳内部の情報処理様式と厳密に対応しているわけではないが,このような情報処理手順が脳内部の情報の流れの一つの仮説として考えられるのではないだろうかと思われる。
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