研究概要 |
昨年度に引き続き海馬CA1領域におけるLTP誘導とCaMキナーゼII活性化反応を調べた。海馬放線状層(stratum radiatum)のCA1領域入力線維2ヶ所に刺激電極をおき,テタヌス性電気刺激を与えた。この刺激で,LTPが誘導された。対照は,同じ部位を低頻度の同じ強さの電気刺激を与えた。LTP誘導後,CA1錐体細胞部分をパンチアウト(約0.5mg組織量)し,トリトンX-100を含む緩衝液でホモジェナイズし,遠心沈殿後,上清分画についてCaMキナーゼII酵素活性を測定した。 1)LTP誘導後,時間的経過で,CaMキナーゼII Ca^<2+>非依存性活性を測定すると,0時間,対照に比較して有意に上昇していた。興味深いことには,Ca^<2+>/CaM依存性活性も,LTP誘導の早い時間的経過の中で,増加していたことである。2)あらかじめ,NMDA受容体拮抗薬であるAP5とインキュベイトした海馬切片を用いると,LTP誘導およびCaMキナーゼII活性化反応が阻害された。また,蛋白質基質であるシナプシンIを用いても同様の結果が得られた。3)生後4日目ラット海馬切片を分離し,切片そのものを培養して,約10日後実験に使用した。このような培養切片においても同様の結果を示した。4)海馬切片をあらかじめ^<32>P-燐酸でラベルしておき,LTPを誘導すると,CaMキナーゼII自己燐酸化反応が確認された。以上の結果は,LTP誘導がNMDA受容体刺激によって惹起され,CaMキナーゼII活性化反応が関与している可能性を強く示唆しているものと結論される。 今後,CaMキナーゼII活性化反応に続く基質の燐酸化反応とLTP維持反応との関係およびグルタミン酸受容体刺激,LTP誘導後に,CaMキナーゼIIの遺伝子発現刺激効果への関与について明らかにしていきたいと考えている。
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