研究概要 |
1)ラット局所脳虚血モデルより経時的に取り出した虚血脳において各種ストレス蛋白質のmRNA,proteinの発現様式を調べた。HSP70mRNAは虚血作成より4-8時間後に発現のピークがあり、初期には虚血中心部に、後には虚血周辺部に発現することをin situ hybridizationで明らかにした。また、HSP70は虚血後1-2日後に虚血周辺部のみの神経細胞に誘導されることがわかった。いっぽう、HSP27,HSP47mRNAは虚血後24-48時間後に発現し、その分布もHSP27mRNAでは虚血遠隔部にも発現が見られた。以上のことより、ストレス蛋白質もそれぞれ異なった発現様式を示し、その機能も細胞の生死だけでなく、組織修復にも関与することが窺われた。 2)ラット局所脳虚血におけるストレス応答の分子メカニズムについてストレス蛋白質遺伝子の転写調節機構を調べた。転写因子(熱ショック因子:HSF)の結合により転写が始まる熱ショックエレメントに対する虚血脳の結合脳をgel shift assayにより調べ、転写因子である熱ショック因子の活性化を検討した。熱ショック後のラット脳と同様に虚血脳でも早期(0.5-1時間後)より熱ショック因子の活性化が起こることがわかった。また虚血脳を虚血中心部と周辺部に分けて熱ショク因子の活性化を調べることにより、虚血後早期には虚血中心部、その後は虚血中心部に活性化は移動することがわかり、HSP70mRNAに発現様式によく相関することがわかった。またHSF1抗体を使うことにより、活性化したHSFがHSF1であることがsupershift assayにより判明した。これらの結果より、虚血脳でも熱ショックと同様な経路でストレス応答が惹起され、細胞の生死に関わっていることが明らかとなった。
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