研究概要 |
1.Pho85キナーゼと相互作用する因子の生化学的探索。GST‐Pho85を発現している酵母の抽出液をゲル濾過およびアフィニティーカラムにより分析したところ、GST‐Pho85が他の数種の蛋白質と複合体を形成していることがわかった。現在この複合体の構成因子の同定を行っている。 2.Pho85キナーゼの機能ドメインの解析。cdc2キナーゼの抑制的リン酸化部位に相当するY18,22F変異、PSTAIRE配列中のE53AあるいはK58A変異はPho85キナーゼの機能を失わせ、特にY18,22F変異とE53A変異はdominant negativeに機能した。またDdc28型のPSTAIRE配列を持たせた変異体は多コピーでpho85変異を相補できるが細胞の生育を遅くさせた。活性リン酸化部位に相当するF165S166S167の変異体の解析の結果、YTH(Cdc28型)、FTS、FAAのいずれの変異体もpho85変異を相補できることがわかった。以上より、Y18,22とPSTAIRE配列はPho85キナーゼの機能に重要であるが、166S(Cdc28の161Tに相当)は不要であることがわかり、Pho85キナーゼはcdc2キナーゼやCdc28キナーゼと高い相同性を持つものの各ドメインの機能はキナーゼ間で異なると考えられる。 Pho85キナーゼと相互作用する因子の遺伝学的探索をDominant negativeなpho85変異体の抑圧遺伝子の単離、Pho4過剰生産による増殖抑制の抑圧遺伝子の単離などにより行っている。 3.pho85変異による生育遅延、ガラクトース資化能の低下、呼吸欠損などの変異形質はPHO4遺伝子の欠失によって抑圧され、逆にPHO4を過剰発現させると増殖が更に抑制されることからPho85キナーゼはPHO4を介して糖の資化性や増殖の制御を行っている可能性が考えられる。
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