細胞は、染色体DNA上に損傷が生じると細胞周期をG1期及びG2期に停止し、修復が完了するまでS期やM期へ進行しないというチェック機構を備えている。従って、DNA修復と細胞周期制御は密接に連関した機構の1つであり、両者の連関機構を分子レベルで明かにすることは重要な異議を有する。本申請者らは、これまでに、紫外線照射により損傷を与えたSV40のミニ染色体を鋳型とする無細胞系を構築して解析を行ってきた。本年度は、この無細胞系を用いて、ヒトの遺伝的修復欠損として知られる色素性乾皮症(XP)のC群について、その修復欠損を特異的に相補する蛋白質を精製し、さらに、そのcDNAクローニングを完了した。XP-C相補因子は、SDS-PAGE上の分子量が125Kと58Kの2つのポリペプチドの複合体であり、それぞれのcDNAクローニングの結果より、p125は、酵母の修復因子RAD4と部分的に高い相同性を、また、p58はRAD23と全体に渡り高い相同性を持つことを明かにした。RAD23のヒトのホモローグとしてはp58以外にもうひとつ別の遺伝子も単離している。また、p125のmRNAの発現がXP-C群の細胞で低下していること、さらに、p125とp58の2つの遺伝子が染色体上の非常に近接した領域にあることを明かにしている。この蛋白質と細胞周期制御との連関については、p58のN末端領域が、チェックポイント機構との関連が示唆されている蛋白質であるユビキチンと高い相同性を持つこと、また、p125は、非常に多くのリン酸化を受けるサイトを持ち、実際にリン酸化されていることなどから、興味深く、現在解析を進めているところである。
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