研究概要 |
自己の抗原に対する寛容の成立は、主に胸腺において自己のMHC-ペプチド複合体をT細胞が認識して、ネガティブセレクションがおこることによると考えられている。この免疫寛容の成立に最も大きな影響を与えるHLAクラスI分子に結合するペプチドの解析は、まだきわめて限られている。そこで多数のHLA class I allele分子に結合する自己抗原ペプチドを解析した。精製したクラスI分子より結合ペプチドを分離、HPLCにて分画した後、ピーク分画およびそれ以外の分画をプールしたものについて、エドマン法によりアミノ酸解析した。この結果、HLA-A1,-A11,-A31,-A33,-B35,-B38,-B39,-B51,-B52,-B78,-B58,-B60,-B61,-B62に結合している自己抗原ペプチドのモチーフを明らかにすることができた。さらにHLAクラスI分子と多数のペプチドの結合を測定できる系を開発し、これを用いてHLA-B35分子とペプチドの結合について解析した。118個の9-merペプチドとHLA-B^*3501分子との結合では、9番目がTyrのときは最も結合力が強く、Phe,Leu,Ile,Metの順であった。これはプールした自己抗原ペプチドをエドマン法により解析した結果とほぼ一致していた。C末端がTyrである100個の8-12 merの合成ペプチドとHLA-B^*3501分子との結合を解析したところ、10-merから12-merの長いペプチドでも効率的にHLA-B^*3501分子と結合できることが明らかになった。さらにペプチドのアンカー(2番目と9番目)以外の部位がHLA-B^*3501との結合に影響を与えないかを118個の9-merを用いて調べたところ、1,3,4,5,7番目の部位でもHLA-B^*3501分子への結合に影響を与えることが明らかになった。このことより、ペプチドとHLAクラスI分子の結合にはペプチドのアンカー部位が最も重要だが、アンカー以上の部位も強く影響を与えることが明らかになった。
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