Tリンパ球の胸腺内での分化における胸腺細胞と胸腺ストローマ細胞の相互作用の果たす役割を解明するために、マウス胸腺細胞のサブポピュレーションに発現している細胞表面抗原(IMT-1と命名)を認識するモノクロナール抗体、1-23抗体、を作成し、抗原の解析を行なった。IMT-1抗原は胸腺細胞のサブポピュレーションに特異的に発現しており、Bリンパ球系細胞および成熟Tリンパ球には発現していない。IMT-1抗原はCD4-8-DN胸腺細胞のCD44-25+の分化段階の細胞に発現し、それ以降CD4+8+DP細胞まで発現しており、SP細胞へ分化すると細胞表面から消失する。胎仔胸腺においては、胎齢15.5日目までは一部の細胞に弱く発現しているが、胎齢16.5日目からはほとんどの細胞に発現するようになり、生後急速に消失する。IMT-1抗原のTリンパ球の胸腺内での分化に果たす役割を解明するために、1-23抗体をin vitroにおける胎仔胸腺臓器培養の系に加えた。胎齢16.5日の胎仔胸腺細胞はほとんどCD4-8-DN細胞であり、in vitroにおける胎仔胸腺臓器培養を行なうと、CD4+8-およびCD4-8+SP細胞へと分化する。この時、分化したCD4+8-細胞とCD4-8+細胞の細胞数の比は約2:1である。1-23抗体存在下で胎仔胸腺臓器培養を行なうと、分化したCD4+8-細胞とCD4-8+細胞との細胞数の比が逆転した。以上の結果よりIMT-1抗原が胸腺細胞の分化に関与している可能性が示唆された。
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