研究概要 |
平成5年度の研究にて確立した変異APC株樹立方法の効率を検討した.得られた変異APC株のうち約43%がT細胞刺激能を消失しており,効率良くAPC変異株が得られることがわかった.種々のAPC変異株のうち、本年度はとくにAβz/AαdクラスII分子発現は正常であるがB/WF1マウス由来病原性自己反応性T細胞クローンに対する刺激能力を消失した変異株に焦点を当てて解析した.APC変異株2A11は病原性自己反応性T細胞クローンに対してはいかなる細胞数においても刺激能を消失していたが、KLH反応性T細胞クローンに対しては野生株(TAβz)と同程度の強いAPC活性を有してした.従って,この変異株はT細胞刺激に必要なアクセサリー分子には異常がなく、自己抗原ペプチドそのものの変異かあるいはそれがAβz/AαdクラスII分子に結合していないと考えられた.この変異株のクラスII遺伝子の塩基配列を解析すると、Aαd鎖の69番目のアラニンに対応する塩基配列(GCA)がスレオニンに対応する塩基配列(ACA)に変異していた.他のクラスII分子のアミノ酸変異は認められなかった.この結果から2A11変異APC株は,この部位のアミノ酸に変異が誘導されたために自己反応性T細胞クローンの標的抗原である自己ペプチドが結合できなくなった可能性が考えられる.次に野生株(TAβz)と変異株(2A11)の結合ペプチドの解析比較を試みた.野生株のクラスII分子結合ペプチドをアフィニティカラムで精製し逆相HPLカラムで分離した3個のピークについてアミノ酸シークエンスを行なった。一つはL-plastin589-601(XMARKIGARVYALP)に相当するシークエンスで、他の二つ(XATYXEQFTLFXYATE,XIMRXKIAHVVY)は相当するシークエンスがデータベースに見当たらなかった.また,微量であるが有意と思われるピークをプールしてアミノ酸シークエンスを行なった.その結果,相対的な位置として1番目にI or F,6番目にM or Yという主要結合ペプチドモチーフが推定された.現在,変異APC株2A11のクラスII分子結合ペプチドを解析中である.
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