研究概要 |
1、海馬ニューロンにおける細胞表面糖脂質の分布と動態 東京都臨床総合研究所の田井博士より供与された抗糖脂質モノクローナル抗体を用いてニューロンの分化の際の糖脂質の発現の変化を測定した。その結果ガングリオシドGD3がニューロンの分化の初期に発現し、分化に伴い消失することを見いだした。一方コレラトキシンのBサブユニットの結合で見たガングリオシドGM1はニューロンの分化の進行にかかわらず常に細胞表面に発現していた。蛍光抗体法による実験では他のガングリオシドであるGM3,GT1b,GD1bの発現は見られなかった。GM1はニューロンの軸索にも樹状突起/細胞体にも分布していたことから、金コロイドで標識したコレラ毒素を調整し、樹状突起と軸索での動きを高感度ビデオカメラを用いて顕微鏡下で観察した。その結果GM1は軸索ドメインでも樹状突起ドメインでも非常に遅い拡散をしていることがわかった。 2、培養上皮細胞におけるGM3の細胞内分布 ニューロンの膜形成機構の理解のヒントを得る目的でニューロン同様極性を有している上皮細胞の膜形成に関しても研究を行なっている。培養上皮細胞であるMDCK細胞は先端面と側底面の二つの形質膜を有しており、糖脂質は主として先端面に濃縮されていると言われているが、詳細な検討は行なわれていない。MDCKの主要糖脂質であるGM3に体するモノクローナル抗体を用いてGM3の細胞表面での分布を測定した。メンブレンフィルターに生育させたMDCK細胞は上側を先端面、下側を側底面と配向して配列する。先端面と側底面はタイトジャンクションによって仕切られている。このような細胞は上側からは抗GM3抗体によって間接蛍光抗体法により染色されるが下側からは染色されなかった。またカバーグラス上に生育させたMDCK細胞を抗GM3抗体を用いて染色すると先端面に特徴的な斑点状の染色パターンを示したが、培地からカルシウムを除いてタイトジャンクションをはずすと側底面も染色された。これらの結果はGM3は先端面に局在しており、局在化にはタイトジャンクションが必要であることを示している。
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