研究概要 |
マウスゲノムDNAライブラリーとしてはstrain129由来のcosmid libraryを用い,プローブとしては我々が既にクローン化してある全長のヒトα-N-acetylgalactosaminidase cDNA(pcD2-HS1225)を用いてスクリーニングを行った。 現在までに,α-N-acetylgalactosaminidaseゲノム遺伝子の全エクソン,及び5′,3′のflanking segmentを含む約40kbpのクローン化を終え,その塩基配列の解析についても11,846bpについて終えている。 マウスのα-N-acetylgalactosaminidase遺伝子の構造は,ヒトのα-N-acetylgalactosaminidase遺伝子と同様に9つのエクソンから構成されていることが明らかにされた。splice donor,splice acceptorについては,すべてGT-AG ruleに従っていた。promoter領域に関しては,TAAT,CAAT-like sequenceは認められなかった。promoter領域の613bpの領域のGC含量は58.1%と高く,house keeping geneとしての特徴を有していた。開始コドンは第1エクソンの3′側から16bpのところにあり,終始コドンは第9エクソンに存在した。poly adenylation signalはTGA codonから495bp下流に認められた。ヒトのα-N-acetylgalactosaminidaseとの比較では,共に9つのエクソンから構成され,タンパクの翻訳領域についても,たとえばエクソン2でその相同性が86.8%であるように,極めて高い相同性が確認された。 以上のように,strain 129由来のマウスα-N-acetylgalactosaminidase遺伝子の全構造を明らかにすることができた。塩基配列を決定したのは11,846bpであるが,その5′側,3′側に十分な長さを有するflanking segmentもクローン化されており,マウスのα-N-acetylgalactosaminidase遺伝子をgene targettingにより破壊するために必要なゲノムDNAのクローン化と構造解析を終了した。今後はこのゲノムDNAを用いて,targetting vectorを構築し,マウスα-N-acetylgalactosaminidase遺伝子のgene targettingによる,Schindler病,Kanzaki病のマウスモデルの作製をめざして研究を進めて行く予定である。
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