研究概要 |
GPI結合型膜タンパク質のGPI部位の糖鎖構造に関して,哺乳動物由来のものは量が得られないために,原虫由来のものとの比較により構造推定しているのが現状である。そして哺乳動物由来GPI糖鎖がどの程度構造多様性を示すか,同一細胞の異なったGPI型膜タンパク質のGPI部位が同じかなどの点は,また余り解析されていない。 そこで蛍光標識法を用いて,GPI型糖鎖の高感度な簡便解析技術の開発を試みた。GPI糖鎖の蛍光標識には2種類の方法が考えられる。第一はエタノールアミンとグルコサミンのアミノ基をダンシル試薬と反応させる方法。第二はGPI型鎖を亜硝酸分解してグルコサミン残基を2,5-アンヒドロマンノースとして,次にピリジルアミノ化する方法である。両法とも実際の試料に当てはめて検討した。 試料にはヒト尿由来の水溶性CD59を用いた。まずこの糖鎖を従来法で糖鎖構造を多様性まで決定した(研究発表論文1に発表)。次にCD59をダンシル化した後,HPLCにて単離して、これをプロナーゼ消化して蛍光標識GPI糖鎖部を分子ふるいクロマトグラフィーで精製した。この標品はHPLCで数本のピークに分離した。現在各ピークが,先に構造決定したどの構造に対応するかを解析している。 第二のピリジルアミノ化法についても検討した。CD59の亜硝酸分解物を脱塩してから常法に準じてピリジルアミノ化した。次いでプロナーゼ消化後,HPLC精製を行ったところ、極めて複雑な溶出パターンを示した。CD59を亜硝酸分せずにピリジルアミノ化した場合には、蛍光標識強度は,亜硝酸分解試料と較べて1%以下であったので、亜硝酸分解が複雑な蛍光標識パターンを示す原因であることを強く示唆した。現在さらに原因を解析中であるが,本法はGPI糖鎖分析には適さないと暫定的に結論した。
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