研究概要 |
リアノジン受容体は筋小胞体(SR:sarcoplasmic reticulum)と細胞膜の一部である横管(T-tubule:transverse tubule)との間の“foot"構造と同定され,SRから細胞質にカルシウムを放出するイオンチャンネルとしての活性を有する。リアノジン受容体はその形態学的および電気生理学的特徴から筋収縮の際のカルシウム放出を司ると予想されているが,実験的な証拠はまだなく,興奮-収縮連関(E-C couping)におけるその役割は不明のままである。 我々はリアノジン受容体の機能を調べるために,骨格筋型リアノジン受容体欠失マウスを作製し,その動物の組織学的または生理学的な解析を行なった。骨格筋型リアノジン受容体欠失マウスは胎生期には生存しているが,出生後全く動きがなく,呼吸不全のため生存することができない。この変異マウスの筋組織では野性型のものと比較して筋細胞が未成熟であり,しかもその数が少なかった。この変異マウスの骨格筋は生理的条件下の電気刺激では全く反応しないが,細胞外液からのCaイオン流入を強制的に増加させる状態下において収縮反応を示した。このことにより,E-C couplingにおける骨格筋リアノジン受容体のカルシウム放出チャンネルとしての生理的機能が実験的に証明された。また,骨格筋型リアノジン受容体欠失の骨格筋であるにもかかわらずカフェイン収縮が存在することにより,他のリアノジン受容体サブタイプは骨格筋E-C couplingに関与できないことが示唆される。
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