研究概要 |
本研究では植物ホルモンとして最も多面的な作用を持つオーキシンで発現が制御される遺伝子群をクローン化しその機能並びに発現制御機構を調べることを目的としている。これまでにparA,parB,parCをタバコ葉肉細胞プロトプラストから、arcAをタバコ培養細胞BY-2からクローン化して解析してきた。本年度は以下のような成果があった。 (1)オーキシンに関するシス配列の解析 parBのオーキシンに関するシス領域をGUSをレポーターとする形質転換タバコの実験系で解析した。その結果5′上流域-210〜-162までの49bpと-374〜-279までの96bpの二つの領域が生理的濃度のオーキシンに独立に応答して遺伝子を活性化できることが示された。これらの配列はas-1等と異なるものであった。またparBのオーキシンに対する応答性は発生の進行と共に大きく変化することが明らかになった。オーキシンに関するシス配列は複数種類存在し、それらの活性は組織や発生段階によって大きな影響を受けると考えられる。 (2)arcA産物の機能解析 WD-40 repeatと呼ばれる分子内繰り返し構造を有するarcA産物は、様々な生体制御因子を構成員とするGβファミリーに属する。arcAはこのファミリーのなかでも活性化されたCキナーゼと結合するラットのRACK1等と共にサブファミリーを形成している。植物細胞内でarcA産物と結合するタンパク質にも興味が持たれる。arcA産物の生化学的解析には抗arcA抗体が必須である。そこでヒスチジンのヘキサマーを付加したarcA産物を大腸菌内で過剰発現させアフィニテイー精製し、これを抗原としてマウスおよびラットを免疫しarcAの産物に対するポリクローナル抗体の作製に成功した。この抗体を用いてarcA産物の細胞内局在の検討、免疫沈降法によりarcA産物と結合するタンパク質の探索等を行う予定である。
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