研究概要 |
GA_3によって誘導される遺伝子はいくつか知られているが、発現誘導機構に関する研究はα-アミラーゼを対象としたものがほとんどである。したがって,これらとα-アミラーゼ以外の遺伝子との間に共通の機構が存在するのかどうかという問題に関心が凭れるようになっている。そこでGA_3による誘導に関与すると考えられるプロモーターの配列を検討した結果,OZ-α遺伝子には転写開始点より上流142bpに5′-AATACAAATTC-3′というオオムギのα-アミラーゼ遺伝子のGA_3応答因子と類似の配列が存在した。このことからOZ-αはα-アミラーゼと共通の機構によってGA_3による誘導を受けていることが推測された。一方,GA_3に対して短時間で応答する点でOZ-αやα-アミラーゼとは異なるOZ-βの遺伝子にはこれと類似の配列および別のGA_3応答配列の候補であるとされる‘ピリミジンボックス'は見られなかった。したがってOZ-βはこれまでに報告されたものとは異なる機構を有している可能性があると考えられたので,シスエレメントの解析を行った。OZ-βのプロモーター約700bpの下流にレポーターとしてβ-グルクロニダーゼ(GUS)を連結した融合遺伝子を作製し,これを培養細胞(OC line)由来のイネプロトプラストにエレクトロポーレーション法により導入した。CUS活性のトランジエントな発現をしらべたところ,導入後2日目に活性が最大となり,さらにこの活性はGA_3添加で2〜3倍に上昇した。またプロモーター部分の5′-欠失変異体を用いて同様な実験を行った結果、-316〜-219bpの領域にGA_3による誘導に関与する配列の存在が示唆された。異なるシベレリン応答性をもつOZ-αとβはジベレリンの作用機構を解明する上での1つの有用なモデル物質となると期待される。今後、可能ならば,より生体内に近い系としてのアリューロン層由来のプロトプラスタを用いた詳細な解析や,各遺伝子を導入したプロトプラストより再生したイネの種子を用いた解析を行いたい。
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