研究概要 |
(1)エチレン受容体とAg^+イオンとの特異的結合.Ag^+イオンによるエチレン活性阻害作用の研究から、エチレン受容体のAg^+結合サイトには少なくともSが1コあることを提案した。今回はさらにAg^+イオン以外のCu^+,Au^+,Tl^+,Cd^<2+>,Hg^<2+>,Pd^<2+>のCl^-,CN^-,S_2O_3^<2->,thioglucoseなどの錯体について、カ-ネーションの花持ちに及ぼす影響を検討した。Pd(II)錯体およびTl(I)錯体がわずか1〜2日ではあるが花持ちをよくする、つまりエチレン作用を阻害することを見い出した。Pd^2やTl^+に共通する性質はイオンの大きさ、電荷、電子配置ではなく、ソフトなイオンであるということである。これは我々が提案しているAg-binding siteがSを含むソフトな環境にあることを支持するものである。 (2)エチレン受容体の分離.昨年はAg^+イオンをマーカーにした新規なエチレン受容体分離法について検討したが、いくつかの重要な問題点が残されていた。特にICP-MAS法で、カラム分離した画分に含まれる極微量のAg^+(ppbオーダー)を精度良く検出するには、多くの前処理の検討が必要であったが、今回マトリックアスを透析で除去することで精度良く測定できることを明らかにした。またエチレン受容体の分離には白色燈下で育てたもやしの新芽より、暗室で育てたもやしの新芽の方が適していることがわかった。暗室内で育てたもやし新芽の抽出相をCM-Sephadexカラムで分離した結果、Ag^+イオンは100〜109mlの画分のみに検出され、この部分に受容体が存在する可能性があることを示した点で注目される。
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