研究概要 |
我々はこれまでに、ツメガエル嚢胚外胚葉細胞のミクロ培養系において、bFGFがオ-ガナイザー細胞の神経誘導作用を代行し、生理的低濃度で神経細胞の分化を誘導することを明らかにした。オ-ガナイザー細胞は未分化外胚葉細胞を神経化した後、更に神経系の頭尾軸部域化を誘導することが知られているので、本研究ではbFGFがオ-ガナイザー細胞この作用をも代行し得るのか解析した。 初期嚢胚(st.10)の外胚葉細胞を様々な濃度のbFGF存在下で培養した後、RNAを抽出し、ツメガエル幼生の中枢神経系頭尾軸に沿って局所差次的に発現する4種のhomeobox遺伝子(XeNK-2,En-2,XlHbox1,X1Hbox6)の転写発現をRT-PCR法で定量的に解析した。その結果、bFGFは濃度に応じてあらゆる部域の神経系細胞を誘導し得ることが明らかになった。0.1ng/ml以下の低濃度のbFGFでは、頭部マーカーのXeNK-2,En-2の発現が誘導されたが、bFGF濃度を上昇させるとこれらの発現は抑制され、代わって尾部マーカーのXlHbox1,XlHbox6の発現が漸次誘導された。誘導されるマーカーの生体内での発現部域と、各マーカーを最大に誘導するbFGF濃度はよく相関し、低濃度ほど頭部、高濃度ほど尾部のマーカーが誘導された。これらのマーカー遺伝子の発現には神経細胞の普遍的マーカーNCAMの発現が伴うが、オ-ガナイザーを含めて様々な部域の中胚葉マーカー(noggin、goosecoid,brachyury,Xwnt-8)の発現は見られなかったことから、bFGFは直接神経系細胞の分化を誘導し、濃度勾配により単独で神経系頭尾軸部域化を誘導し得ることが明らかとなった。
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