研究概要 |
筋細胞の決定、分化の制御、細胞系譜、細胞の発生時期、培養系における分化能などを指標にすると筋芽細胞は幾つかのポピュレーションよりなっている。myotomeに最初に現われるタイプはmyf5-MRF4で決定と分化が制御されており、ついで体幹と四肢に現われる細胞はmyf5-MyoD-myogeninと発現して分化する筋細胞である。さらにE15,16には分化培地に変換しても培養系では分化しない筋芽細胞(MyoD,myogeninは発現する)が存在し、維持されている。さらに発生後期にはmyogenin-1-マウスの四肢にも少量であるがMyoD,MRF4ポジテイブな筋管細胞が現われることから、myogeninがなくともMRF4の発現により分化が進む細胞が存在する可能性が示唆された。 bFGFに加えて筋芽細胞を増殖させる新しい因子としてLPAを同定した。LPAはジフテリア毒素で活性が阻害されることからシグナルはGiタイプのGTP結合蛋白を介して入るものと推定され、bFGFとは異なる経路でシグナルが伝えられる。bFGF存在下ではMyoDの発現そのものが抑制されるがLPA存在下ではMyoDの発現は維持されるが、myogeninの発現誘導が抑えられている。また、bFGF存在下ではたとえコンフルエントになっても分化しないがLPA存在下ではコンフルエントになるとmyogeninの発現が誘導され、筋管細胞へと分化する。発生過程におけるbFGF及び、その受容体のMyotomeや肢芽における発現は筋芽細胞の発生初期には強いと報告されているが次いで発現がほとんど確認できなくなる。おそらく細胞の増殖と移動が進み、筋芽細胞が特定の領域を占め、細胞が接触しあうようになるとたとえLPAが存在していても分化し、筋管細胞になると推定される。
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