研究概要 |
鉄欠乏条件下で強く発現されるオオムギ遺伝子(Ids)のクローンを7つ,ディファレンシャルクリーニング法により単離し,そのうちの3つのcDNAの塩基配列は既に決定した.そのうちのひとつIds3のゲノミッククローンを得て,その塩基配列を決定した.この塩基配列から推定されるアミノ酸配列は,2-オキソグルタール酸と2価鉄,アスコルビン酸をコファクターとするジオキシゲネースと高いホモロジーを示し,Ids3の遺伝子産物はジオキシゲネースである可能性が高く,デオキシムギネ酸からムギネ酸への変換酵素であると推定される.そこでIds3のcDNAを大腸菌で発現させ,このタンパク質産物がIn Vitro系で酵素活性を示すかどうかを検討したが,成功しなかった.一方,既にオオムギの染色体を一本づつコムギに加えたオオムギ-コムギ添加系統を用いて,デオキシムギネ酸からムギネ酸への変換酵素をコードする遺伝子はオオムギの第4染色体に存在することを明らかにしている.コムギにはこの酵素は存在しないので,これらのオオムギ各染色体添加コムギを鉄欠乏あるいは正常条件下で生育させ,ノーザンハイブリダイゼーション法により,Ids3の発現を検討したところ,オオムギ第4染色体を添加したコムギのみにその発現がみられ,鉄欠乏処理によって増加した.この結果はIds3がデオキシムギネ酸からムギネ酸への変換酵素をコードしていることを強く示唆している.
|