研究概要 |
(1)サンプル濃縮/細胞増殖による評価系の確立(実際の河川水・水道水を用いて) 多摩川河川水および水道水を用いて細胞増殖を測定した.多摩川水では,どの季節においても最上流では良好な増殖が見られたが最下流では増殖性が低かった.中流域は大きな季節変動が見られた.水道水では,凍結乾燥により調製した1,10倍濃度サンプルを用いた実験で,山梨と比較して千葉・埼玉・東京・神奈川では細胞増殖の悪化が見られた.また,同時に測定した従来の水質指標と細胞増殖とが一致しなかったことは,バイオアッセイによる評価の必要性を示すものと考えられる.以上,1-100倍程度に凍結濃縮した環境水サンプル中で動物細胞を培養することにより,不特定多様汚染を示す環境水の包括的な生体影響評価が可能であることが明らかとなった(水環境学会で発表予定). (2)多成分系での毒性評価の試み(重金属を用いて) 重金属添加培地中で細胞増殖と細胞内重金属蓄積量を経時的に測定した.細胞内蓄積量は約1日目には平衡値に達し,そのまま2日までは変化が見られなかった.この初期平衡重金属蓄積量とその後に現われる増殖阻害との間には,密接な関係のあることが明らかとなった.さらに,Cdを中心とした2成分系においては,増殖阻害への影響は,各種金属の蓄積量と単独投与時の蓄積量あたりの毒性発現から線形和として算出される値でおおむね評価できることが明らかとなった(ヨーロッパ動物細胞工学会/日本動物細胞工学会合同大会で発表,プロシ-ディングズ印刷中).以上,細胞内に実際に取り込まれた毒物量に着目することにより,環境水サンプルなどの多成分系での毒性予測がある程度可能となるとの見通しを得た.
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