研究概要 |
本研究では,汚濁水域の底質の性状的また機能的回復を図るとともに,人間の生産活動の持続のもとでの健全な水圏生態系の維持を支援する技術を確立することを最終的な目標に,まずその端緒として,(1)汚濁水域における底層・底質環境の形成と底生生物の生育との関連,(2)底泥中の有機汚濁質の特性把握,(3)有機底泥の浄化手法とその改善効果,などに関して検討を行うこととした。すなわち,(1)に関しては,汚濁の顕著な広島県福山港湾奥部を対象に,底生生物の生息状況の把握ならびに各種水質・底質項目の調査を実施し,相互の関連等について検討を加えた。その結果,調査地点のIL,CODsedの値は湾奥ほど高く,有機物の堆積が顕著であること,底生動物相に関しては,最奥部では年間のほとんどの期間が無生物状態であったこと,また,C.capitataは硫化物濃度が2〜4mgH_2/g乾泥程度であっても十分生育し,他のベントスと比較して優れた耐汚濁性を有しており,湾内の優占種となっていること,などが明らかとなった。(2)に関しては,各種有機底泥試料の熱重量分析を行い,フミン酸など既知の比較試料の分析結果も参考に考察した結果,通常のILで測定される底泥の減量値には400〜600℃で分解されるものがかなりあり,これは生物反応にあまり関与しない物質と考えられることなどを指摘した。一方,(3)に関しては,これまでの研究から,汚濁水域の堆積泥中の有機物を短時間に分解するには生物反応では困難であると推察されたことから,酸化力のより強いオゾン酸化処理に着目した。その結果,3時間程度のオゾンばっ気によって,底泥中のCODsedの約40%を処理することが可能であり,窒素・リンの溶出も抑制できることなどを明らかにした。今後,このオゾンばっ気による有機物の低減効果の向上策と処理泥における底生動物の生息環境の改善効果について,さらに検討を継続する考えである。
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