研究概要 |
環境水の有害性を一括評価するために,哺乳動物の培養細胞系を用いて発癌性に関してはエ-ムス法による変異原性試験に加えて哺乳動物細胞を使った小核試験を,また細胞毒性に関してはコロニー形成阻害試験を東京都の多摩川河川水に適用し,有用性を検討すると共に,単一物質についてこれらの試験を実施し,データの集積を図った。 1)東京都の多摩川河川水を上流の羽村堰から下流の丸子橋に至る6箇所の地点で採取し,溶在微量有機物を樹脂に吸着させることで濃縮回収した。この濃縮試料をCHL細胞に作用させ、遺伝子障害によって生じる小核の出現頻度からこれら試料水の遺伝毒性を判定した結果,下流域の河川水に有意の遺伝毒性物質が検出された。これらの結果を突然変異原性試験であるエ-ムス試験の結果と比較検討したところ,余り相関性が認められず,哺乳動物細胞での遺伝毒性の発現がバクテリアで検出される遺伝毒性を異なる可能性が示唆された。 2)同一の培養細胞で細胞毒性を検討する系を確立するために,上記のCHL細胞を用いて,コロニー形成阻害試験を行った。試料として上記で用いた多摩川河川水から回収濃縮したものを用いた結果,中流域の河川水に用量依存性の細胞毒性が認められた。このコロニー形成阻害事件で求めた細胞毒性と小核試験での遺伝毒性との間には相関性がなく,河川水中には夫々の毒性を有する物質が独立的に存在している可能性が示唆された。 3)一連のハロゲン化フェノール誘導体について小核試験とコロニー形成阻害試験を適用し,これら試験の性格付けを行った。その結果,ハロゲンの置換状態により毒性発現が顕著に異なることを認められ,これら試験の鋭敏性が示唆された。
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