研究概要 |
5例のパーキンソン病患者線条体からDNAを抽出し、mtDNAをPCR法を用いて増幅し、全塩基配列を決定した。翻訳領域において9個の非同義置換が見いだされた。症例1ではND2,Thr→Ala;ATP6,His→Tyr、症例2ではND6,Tyr→Cys、症例3ではND1,Ile→Val;ND2,Ile→Val、症例4ではND2,Thr→Ala;ND5,Thr→Ala、症例5ではND5,Thr→Ala;Cytb,Tyr→Hisが見られた。12SrRNA遺伝子において4箇所の塩基置換が見いだされた。症例1の663A→G置換はdomain Iのstem構造のA=U塩基対をG・U塩基対に変化させた。症例3の752C→T置換と1107T→C置換はloop領域にあり、1310C→T置換はstem構造のG≡C塩基対をG・U塩基対に変化させた。16SrRNA遺伝子において、症例1では、1736A→G置換、2151Aの挿入が観察された。tRNA遺伝子において、症例2ではtRNA^<Thr>のaminoacyl acceptor stemに15951A→G置換が観察された。この部位ではA=UまたはG≡C塩基対が幅広い種で保存されており、G・U塩基対は観察されなかった。この置換は肥大型心筋症の症例1例でも見られた。症例4ではtRNA^<Gln>のDHU loopに4386T→C置換が観察された。この置換は3例の他の症患コントロールでも見られた。これらのアミノ酸置換が、ミトコンドリアからのラジカルの産生を増加させる、あるいは遺伝子産物の酸化的損傷に対する脆弱性を高める可能性が考えられた。また、塩基置換がrRNAおよびtRNAに構造変化をもたらし、発症の遺伝的危険因子となる可能性が考えられた。
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