研究概要 |
パーキンソン病患者の脳内に発見された1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(TIQ)をサルに投与することにより、パーキンソン病様症状を惹起することが明らかになった。しかし、TIQの脳内濃度はパーキンソン病患者において必ずしも増加していない。このため、他のTIQ関連化合物をパーキンソン病患者脳内で探索した。この結果、1-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1-フェニルTIQ)および1-フェニル-N-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1-フェニルNMTIQ)をパーキンソン病患者脳内において初めて検出した。パーキンソン病患者とコントロール患者の脳から抽出した。脳5gをEDTAとアスコルビン酸を含む過塩素酸液中でホモゲナイズした。遠心後、上清を集めジエチルエーテルで抽出し、その水相をNaOHでpH11に調節しジクロロメタンで抽出した。有機相をEDTAとアスコルビン酸を含むHClで抽出した。水相をNaOHでpH11に調節しジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、窒素気流で乾固した。残渣を酢酸エチルに溶解し、ガスクロマトグラフィー/タンデムマススペクトロメトリー(GC/MS/MS)の選択反応検出(SRM)により測定した。標品としての1-フェニルTIQと1-フェニルNMTIQはフェニルエチルアミンと安息香酸から合成した。パーキンソン病患者の脳内に1-フェニルTIQと1-フェニルNMTIQを初めて検出した。1-フェニルNMTIQは1-フェニルTIQのN-メチル化により内因性に生成するものと考えられる。これらの化合物、特に1-フェニルNMTIQは1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)に構造がにているためパーキンソン病における病因論的意義の検討が今後必要である。
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