研究概要 |
最近、3塩基反復配列の伸長と呼ばれるDNA異常と神経変性疾患との関係が注目されている。現在までに8種類の神経疾患において3塩基反復配列の伸張が報告されているが、その中の一つである歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)において、CAGrepeatが伸張していることを発見した。12番染色体短腕に位置するcDNAクローンCTG-B37に含まれるCAGrepeatが、正常の場合7-23回の繰り返しであるのに、DRPLA患者の片方の対立遺伝子では49-75回に増加していた。またこの繰り返し数と発症年齢が逆相関関係にあり、繰り返し数が多いほど発症年齢が若年化すること、さらに臨床的に良く知られていた表現促進効果(anticipation)も繰り返し数の増加により説明可能であることを報告した(Nature Genet.6:14-18,1994)。 さらに、最初の報告のCTG-B37の塩基配列を基に、CAGrepeatを含むDRPLA遺伝子のcDNAの塩基配列を決定し、その構造及び発現について検討した。ノーザンブロット解析によって、DRPLA遺伝子は解析した全ての臓器に発現しており、単一の約4.5kbの転写産物が検出された。cDNAは1184アミノ酸をコードしており、CAG反復配列のコードするポリグルタミンは484番目のアミノ酸より始まっていた。データベースの検索によってこの遺伝子の機能を示唆するような情報は得られなかったが、単一アミノ酸の繰り返し、C末に2箇所みられるアルギニン-グルタミン酸の繰り返しなど注目すべきアミノ酸配列が見られた(Nsture Genet.8:177-182,1994)。
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