研究課題/領域番号 |
06273211
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 一三 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (30126057)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 利己的な遺伝子 / プログラム細胞死 / 制限酵素 / メチル化 / 相同組換え / 非相同組換え / 寄生 / 利他行動 |
研究概要 |
私たちの興味は「遺伝子間のホモロジー相互作用がなぜあるのか」という問題である。これまで、遺伝子間の相同組換えにおけるDNAの二重鎖(両鎖)切断の役割に注目し、その解析から、遺伝子間の相同相互作用が相同な遺伝子間の破壊的な相互作用、進化学の言葉で言えばinterferenceによるsibling competitionではないかと提案している。今年度は、典型的なDNA二重鎖切断酵素である制限酵素が、「利己的な遺伝子」として進化したことを示唆する結果を得た。また、DNA間の相同相互作用によって二重鎖切断が作られることを示唆する産物を動物細胞で得た。 (1)「利己的な遺伝子」としての制限酵素メチル化酵素 二型の制限酵素とメチル化酵素は、細胞をウイルスなどの感染から防御するために進化したと信じられてきた。しかし、認識配列の著しい多様性と高い特異性、互いにホモロジーがない独立な進化、DNAを稀にしか切断しないレアカッターの存在など、この考えでは説明しにくい謎も多い。私達は、Pae R7とEco R1の制限修飾遺伝子を連結することによってプラスミドが著しく安定化することを発見した。「これらの遺伝子を失った細胞の子孫は、染色体上の認識サイトを十分にメチル化しきれなくなり、残った制限酵素によって染色体を切断され、死に至る」という機構を支持する証拠を得た。この結果は、制限修飾酵素が自己の維持を宿主に強制する「利己的な遺伝子」であることを意味する。さらに、同じ認識配列を持った二つの制限修飾遺伝子ペアは、同時に自己の維持を宿主に強いる事ができず、その間に生存競争が起きることを示した。制限酵素認識配列の著しい多様性と特異性は「利己的な遺伝子」間の競争排除による「棲み分け」として説明できる。また、制限修飾遺伝子をもったプラスミドが細胞にあると、おなじ複製単位をもつプラスミドによって取り替えられにくいこと、これが追い出された制限修飾遺伝子によって細胞の死がプログラムされることによることを示した。このような「利己的な自殺」戦略による他の利己的な遺伝子との競争によって制限修飾遺伝子が進化したと考えられる。 (2)「相同相互作用による非相同組換え」 DNA間の相同相互作用によってDNAの非相同組換えが起きることを示唆する産物を既に発見した。今回、非相同組換え部分にフィラーDNAが挿入された産物を発見した。これは、中間体として二重鎖切断があることを強く示唆する。 また、相同相互作用によってできる中間体が、ホモロジーの端などでこの機構によって破壊されあるいは反射されると考えて、相同組換えの長さ依存性を導いた。
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