研究概要 |
これまでに5種類の哺乳動物(ヒト、ウシ、ラット,マウス,モルモット)のヒスタミンH1受容体についてウシに関してはcDNAを,また,それ以外についてはゲノム遺伝子をクローン化した.ヒト,ラット,及びモルモットヒスタミンH1受容体のゲノムDNAはいずれもIntronless遺伝子であることを確認した.また,ヒトでは第三染色体p25にその遺伝子が存在した.マウスH1受容体遺伝子については九州大学生体防御医学研究所感染防御学部門渡辺武教授の共同研究によって蛋白質コード領域についてイントロンがないことを確認した.クローン化したH1受容体の蛋白質一次構造について種による違いを比較したところ,そのホモロジーは71-81%とイントロンがないH1受容体において種による違いが著しいことが判明した.このようにイントロンがないH1受容体において種による違いが著しいことは単にH1受容体が受ける機能的制約が少ないためではなく,イントロンが接極的に変異を抑制する役割を果たしている可能性が考えられた.よく似た2つの遺伝子間で相同組替え(homologous recombination)といわれる機構によって組替えがおこることが知られているが,イントロンは遺伝子の間に入りこんでホモロジーのある領域の長さを減少させこの相同組替えを抑制する機能を担っており,その結果イントロンを持っていない遺伝子は進化が速いとする考えである.phosphoglycerate kinase(Pgk)には2つのアイソザイムがありそれぞれイントロンを持つPgk1とイントロンを持たないPgk2の2つの遺伝子にコードされている.ところがPgk2の進化のほうが速いことが報告され,またPyruvate dehydrogenase E1αでも同様のことが報告されている.これらはイントロンが変異を抑制する役割を果たしていることを反映しているのではないかと考え,現在検討している.
|