研究概要 |
我々が研究対象としているカブトガニでは、血球細胞のLPSに対する反応性が極めて高く、瞬時に細胞の脱顆粒をへて、体液凝固が引き起こされる。この血球抽出液は、β-グルカンによっても凝固反応が惹起され、こうした系に関与する因子をFactor Gと命名した。 精製Factor Gは72 kDaのサブユニットαと37 kDaのサブユニットβの二つのポリペプチドが非共有結合で会合したヘテロダイマーの構造をもつ。活性化に伴って、両サブユニット共に、Arg-Glu,Arg-Ileという特定の配列が限定水解を受け、サブユニットαは55 kDaと17 KDaのフラグメントに、サブユニットβは34 kDaのフラグメントに変換される。Factor Gは種々の(1,3)-β-linkageを含むグルカン類によって活性化されるが、中でも直鎖状のcurdlanあるいはparamylonに最も強く反応した。また、cDNA cloningの結果より、サブユニットαは(1,3)-β-D-glucanase A1,Xylanase A,Xylanase Zと相同性の高いドメインからなるモザイクタンパク質であり、一方、サブユニットβはセリンプロテアーゼ前駆体そのものの構造をもつことが分かった。 Factor Gの全アミノ酸配列をもとにセリンプロテアーゼ群の系統樹を作成した結果、Factor Gは却って我々が構造決定したカブトガニ血球細胞由来のFactor BやProclotting enzymeと同じ族に属し、かつDrosophilaのセリンプロテアーゼ遺伝子のEacterとSnakeと共にsuper familyを形成することが明らかとなった。
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