研究概要 |
アポトーシスは、核の凝縮断片化、DNAの断片化等の特徴を持つ細胞死であり、発生・分化において重要な役割を果たしている。心臓でのアポトーシスに関する研究は少ないが、HIV感染によるAIDSと同様にウイルス感染による心筋炎、及びそれに引き続く拡張型心筋症様病態への進展にアポトーシスが関与している可能性が考えられる。我々は最近、心筋炎、心筋症患者での血中TNF-αが高値を示し、またマウスEMCウイルス性心筋炎モデルにおいて血中TNF-αが上昇し、抗TNF-α抗体の投与により心筋細胞障害が軽減することを報告した。本研究の目的は心筋細胞死とアポトーシスとの関連を明らかにし、心筋細胞死の予防、治療法を開発することである。本年度は、我々の開発しEMCウイルス性心筋炎においてサイトカインの発現とアポトーシスの関連について検討した。4週令DBA/2マウスにencephalomyocarditis(EMC)ウイルスを接種し、1、3、7、14、28、80日後に屠殺、心臓を摘出し、RNAを抽出、cDNAを合成し、PCR法を用いIL-1β、IL-2,IL-4,IL-10,IFN-γ,TNF-αのmRNAおよびEMCウイルスRNAを半定量した。EMCウイルスRNAはウイルス接種1日後より検出され、7日後に最高となったが、80日後でも検出された。IL-1β,TNF-αは3日後から有意に発現が増強し、多くのサイトカインの発現は7日後に最高となり、すべてのサイトカインmRNAは80日後も検出された。ApopTag(In Situ Apoptosis Detection Kit)を用いたDNA断片化の検討では、ウイルス接種5日後より陽性細胞が出現し、7日後最も広汎となり、14日後も持続した。以上の結果、ウイルス感染による心筋細胞死にアポトーシスが関与している可能性が示唆された。
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