研究概要 |
ラットの心臓からATP依存性カリウムチャネル(K_<ATP>チャネル)がクローニングされ(rcK_<ATP>-1,Ashford et al.Nature370,456-459,1994)このチャネルの一次構造が明らかになった。研究代表者らはこのクローンを譲り受け,ヒト腎臓由来HEK293細胞にトランスフェクションし、パッチクランプ法を用い電気生理学的にこのチェネルの機能を解析した。これによって,このチャネルは心筋細胞から直接記録したK_<ATP>チャネルと単一チャネルコンダクタンスの大きさや開閉のキネティクスなどはほぼ同一であるが,細胞内のATPに対する感受性が一定でないことや,グリベンクラミドなどのスルフォニルウレア剤によって抑制されない,などの相違点を有することが明らかになった。この相違の一つの機序として,このチャネルが相同性を有する異なるサブユニットの重合によって機能単位となることが示唆されたので,研究代表者らはrcK_<ATP>-1をプローブにしてマウス脳のcDNAライブラリーをスクリーニングし,rcK_<ATP>-1と約80%の相同性を有するチャネルおよびそのsplicing variantを単離することに成功した。現在これらの複数のクローンを組み合わせて発現させ,このチャネルがいかなるサブユニット構造をとって機能しているかを解析している。さらにキメラクローンや点変異導入クローンを作製し,種々のKチャネル開口薬やnucleotide diphosphateによるK_<ATP>チャネル活性化の分子機構について実験を行っている。
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