研究概要 |
酵母カルモデュリンは3個のCa^<2+>を結合するカルシウム結合蛋白質である。2個はN末端ドメインに強く結合し、残りの1個はC末端ドメインにN末端ドメインと比べて弱く結合することがわかっている。脊椎動物のカルモデュリンと比べて一次構造の相同性は64%程度である。この研究の目的は、酵母カルモデュリンのN末端ドメイン(YCMO-N)のCa^<2+>-form及びMg^<2+>-formの立体構造をNMRで調べることである。YCMO-Nを大腸菌の大量発現系で培養、精製した。Ca^<2+>-form及びMg^<2+>-formのCOSY、TOCSY、NOESYなどの2次元NMRスペクトルを測定した。77残基中、Ca^<2+>-formでは51残基、Mg^<2+>-formでは54残基の主鎖αプロトンのシグナルが帰属された。Ca^<2+>-formについて、αヘリックスに特長的なNOEがL4-F19間、E45-N53間、そしてF65-R74間に観測された。また、βシートに特長的なNOE、αプロトンの低磁場シフトが、S26,I27,S28とQ62,I63,E64の間に観測された。これらの二次構造はショウジョウバエのカルモデュリンのヘリックスA,C,Dおよびβシートとほぼ一致している。しかし、ヘリックスB部分に相当する残基については、NOEが観測されない。一方、Mg^<2+>-formについては、α-ヘリックスが、E5-F19間、T34-E40間、E45-N53間、E67-K76間に観測された。またβ-シートがI27とI63の間に観測された。Mg^<2+>-formでは4つのα-ヘリックスと、1つのβ-シートからなりたっていることがわかった。現在、安定同位体^<15>NでラベルしたYCMOを作り、Ca^<2+>存在下、Mg^<2+>存在下で^<15>N-^1H2核3次元TOCSY-HSQC、NOESY-HSQCなどのNMRスペクトルを測定し、立体構造を解析中である。
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