昆虫細胞の大量培養およびC2ドメインの産生に際しての、組換えウイルスの最適の感染多重率、発現の経時変化を調べた。蛋白精製に関しては、当初用いていたDEAE celluloseとmonoQの2段のクロマトでは精製度が十分でなく、これらの間にゲル濾過のステップを入れた。これにより1リットルの培養液あたり少なくとも5mgの精製C2ドメイン蛋白が得られるようになった。SDSPAGEや分析用ゲル濾過におけるその移動度は単量体の予想と矛盾しない。また、それは抗C2抗体と選択的に反応した。N-末端の分析はまだである。 C2ドメインの遠紫外部CDスペクトルには215nmに負のバンドが見られ、また230-245nmに特徴的な浅い負のバンドが見られた。βシート含量が40%程度と比較的多いと予測される。カルシウム存在下ではこの215nmのバンドの強度が減少した。ホスファチジルセリン存在下では、この減少はカルシウム濃度100μM以下で完了した。ホスファチジルセリン非存在下では、この減少はより高濃度側、具体的にはカルシウム濃度50-1000μMの領域で起こった。すなわちこの脂質は単独のC2ドメインに対してもそのカルシウム結合を助長する。一方、C2ドメインの蛍光スペクトルはカルシウム存在下では強度が1割ちかく増し、蛍光極大波長は青色側に移動した。これはカルシウム結合にともなう蛋白中トリプトファン残基の環境変化を示す。蛍光のこれらの変化は、ホスファチジルセリン非存在下ではやはりカルシウム濃度50-1000μMの領域で起こった。 C2ドメイン-カルシウム複合体の、複合体形成反応に関して平衡な、あるいは非平衡なゲル濾過を行い、その分画についてカルシウム原子吸光法を適用した。結合のストイキオメトリの正確な決定はまだであるがおよそ10:1程度の値が得られている。高濃度の1価陽イオンやマグネシウムの影響はなかった。
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