我々は、造血を支持するストローマ細胞株(MS-5)及びストローマ依存性多能性幹細胞株(Myl-D-7)を樹立し、報告した。本年度は、次の2点について研究を進めた。 1.上記の細胞株を用いた共培養系にて、以下の事を明らかにした。(1)Myl-D-7細胞は、ストローマ依存性に増殖し、IL-2、IL-3、IL-6、IL-7、Stem cell factor(SCF)、Epoによっては維持し得ない。(2)GM-CSFにより、分化する。(3)一部のポプレーションがリンパ球系、顆粒球系、または、赤血球系分化抗原を表出している。 2.上記の共培養系におけるストローマ細胞/造血幹細胞の細胞間機構を構成する因子の同定を目的とした″因子の検定″には、長期の培養試験が必要であり、短期間での細胞増殖試験等を指標とした、従来の精製単離による因子の同定が困難であるため、新たに、本因子の検定系の確立が望まれる。そこで、Myl-D-7細胞がストローマ細胞の非存在下ではApoptosisにいたるが、存在下でBcl-2を発現し、自己複製する事を踏まえて、以下の事を行った。すなわち、(1)Bcl-2のプロモーター/エンハンサー領域を得た。(2)ヒトIL-2レセプターα鎖(Tac抗原)をレポーターとしたプロモーター/エンハンサー検定用プラスミドを作製した。(3)得られた領域を上記プラスミドにクローニングし、ストローマ細胞よりのBcl-2発現誘導シグナルに反応し、IL-2レセプターα鎖(Tac抗原)を発現するコンストラクトを得た。(4)現在、このプラスミドをストローマ依存性細胞株にエレクトロポレーション法にて導入し、導入された細胞中より上記の目的に適したクローンを抗Tac抗体を用いて選択中である。(5)クローン選択後、この検定系を用いて上記の細胞間機構を構成する因子の同定を進める予定である。
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