研究概要 |
植物のフェニールプロパノイド二次代謝経路はアントシアニン色素、リグニンを中心とする細胞外皮の構築、紫外線毒の吸収、あるいは病原菌の攻撃に対するファイトアレキシン合成など、多岐にわたる機能を果たしている。エンドウ・フェニールプロパノイド合成系の重要な鍵酵素、フェニールアラニンアンモニア・リアーゼ(PAL)およびカルコン合成酵素(CHS)をコードする遺伝子は多重遺伝子ファミリーを形成しているが、それぞれのメンバーの植物各器官および組織特異的発現、あるいは外的環境要因による遺伝子発現調節機構に関しては未知の部分が多い。本研究では、色素生産やストレス応答において特に重要な役割を担うフェニールプロパノイド二次代謝合成系の鍵酵素をコードするPAL遺伝子、およびCHS遺伝子をモデルとして、多重遺伝子ファミリーの各メンバーの植物各器官・組織特異的発現に関わる制御領域を同定するとともに、鍵となる制御タンパク質をコードする遺伝子を単離して、フェニールプロパノイド二次代謝経路を支配する遺伝的制御プログラムを分子生物学的に解析することを目的としている。以下に成果の概要を列記する。 1.Loss of function実験からPSPAL1,PSPAL2各遺伝子5′-プロモータ領域に含まれるエリシターあるいはUV照射による発現誘導応答に必要なシス因子の候補としてbox1(L-box),box2(P-box),box4(AT-box)があげられた。このことはゲル・モビリテイー・シフトアッセイやDNase I-,OP-Cu footprinting analysisによっても確かめられた。 2.トランスジェニックタバコにおけるキメラ遺伝子の発現様式からPSPAL1,PSPAL2プロモータはともに、根.下位茎における組織特異的発現に関与していることが示唆された。また、PSPAL1プロモータは、さらに花弁の色素沈着部における特異的発現に関与していることが明らかとなった。 3.PSPAL1,2、およびPSCHS1,2のすべてのプロモータ領域のATリッチシークエンスに結合する共通のタンパク質はHMG-I/Yに類似するDNAベンデイングに関与するタンパク質である可能性が大きい。
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