研究分担者 |
高橋 玲 京都大学, 医学部, 助教授 (60144565)
樋野 興夫 財団法人癌研究会研究所, 実験病理部, 部長 (90127910)
志佐 湍 埼玉県立がんセンター, 病理部, 副部長 (90073121)
前田 盛 神戸大学, 医学部, 教授 (50030911)
吉田 廸弘 北海道大学, 理学部, 教授 (60001765)
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研究概要 |
最近,癌の遺伝子研究は急速であるが,化学発癌剤の遺伝子標的,遺伝子異常の重積機構,癌症候群の実験モデルなどの研究では,我国で開発された豊富なラットの実験系が有用である.本班では遅れているラットの遺伝子研究の活性化も視点において研究を進めた. その結果,樋野,小林らにより,Ekerラット遺伝性腎癌ヒト結節性硬化症の原因遺伝子TSC2に対応するラット遺伝子での挿入変異が原因があることが示された.このラットでは,腎癌以外にも子宮肉腫,脾臓肉腫,下垂体腫瘍が発生し,ヒトの癌症候群のモデルとして意義が大きいと考えられた.また,この異常はknudsonの2ヒットモデルに沿った遺伝性を示す新しい癌抑制遺伝子であることが示された.将来の研究の進展が期待される.杉山らはDMBAの静脈内投与で誘発した白血病の15例全例にN-NASの特異的変異(61番目コドンの,2番目の塩基のA→T transversion)を発見した.この異常は,鋭敏なMASA(=mutation allele specific polymerization)法によりDMBA投与後,2日には多数生じていること,この異常がDMBA白血病の特異的染色体重複部の2番染色体の末端部に存在することが明らかになり,この異常の増量効果が白血病の骨髄での増殖に貢献している可能性が示唆された.吉田はLEC肝癌の原因としてウイルソン病遺伝子に対応するラット遺伝子に欠失を明らかにした.これは銅の代謝異常の研究に貢献すると考えられる.志佐はPNU胸腺白血病発生と病系決定遺伝子の部位を明らかにした.芹川はラットのマイクロサテライト(ms)を補強してラット遺伝子地図を作る基礎を築いた.
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