研究概要 |
菊地は,肝/肝癌系でPP1,PP2A,PP2Cの癌性異変を系統的に解析し,また正常肝細胞での動態を検討した。腹水肝癌細胞では,検索した十数種の細胞株全てにおいて,例外なくPP1特にその1イソホームPP1αの特異的なmRNAおよび酵素蛋白の増量を認めた。PP2Aは大方不変,PP2Cは逆に減少していた。これに対し,肝細胞では,EGF刺激により,G1/S期に核内PP1活性が約2.5倍に特異的に上昇し,この上昇は,増殖を抑制するTGFβの存在下で完全に抑えられた。このPP1活性の上昇は,酵素蛋白の上昇を伴わず,翻訳後の修飾あるいは調節サブユニットの影響が考えられる。武田は,PP2Aの72-74kDa調節サブユニットの組織分布を調べた(未発表)。田村は,マウスのPP2Cα cDNA,およびマウスのPP2Cβの5種類のイソホーム(PP2Cβ-1,-2,-3,-4,-5)をコードするcDNAを単離し,それらの解析を行った。伊藤は,新しいホロエンザイムPP1-Mを精製し,cDNAクローニングによるアミノ酸一次構造を決定した。菅沼は,海綿(Agelas axifera)の抽出物がPP2Aのアッセイ系で約3倍に脱リン酸化を亢進することを認め,これをagelasine-Bと同定した。島は,ラット脳から新しいプロテインホスファターゼPPHのcDNAと考えられるクローン(2.1kb)を単離した。久野は,選択的スプライシングにより生じるカルシニューリン(PP2B)制御サブユニットのcDNAクローニングを行った。日野田は,新しいPTP,LC-PTPをクローニングした。矢倉は,Bリンパ球のシグナル伝達におけるチロシンホスファターゼの役割を解析した。野口は,新種のPTPase,RKPTPの全翻訳領域を含むcDNAを解析した。武内は,新規のBand4.1型チロシンホスファターゼを3分子同定することに成功した。揚河は,肺癌患者におけるサイトカインネットワークの解析を行った。
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