研究課題/領域番号 |
06281110
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武部 啓 京都大学, 医学部, 教授 (10028318)
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研究分担者 |
錦織 千佳子 京都大学, 医学部, 助手 (50198454)
野村 大成 大阪大学, 医学部, 教授 (90089871)
吉田 廸弘 北海道大学, 理学部, 教授 (60001765)
立花 章 放射線生物研究センター, 助手 (20188262)
山泉 克 熊本大学, 医学部, 教授 (70107093)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
18,000千円 (直接経費: 18,000千円)
1994年度: 18,000千円 (直接経費: 18,000千円)
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キーワード | DNA修復 / 突然変異 / がん遺伝子 / がん抑制遺伝子 / 活性酸素 |
研究概要 |
多段階発がんの各段階が遺伝子突然変異と染色体再構成で進行するという理論は、主として大腸がんの研究から確立された。本研究は、多段階発がんが促進されている例-高発がん性遺伝疾患および動物-に注目し、どのような機構によるかの解明をめざした。主な要因として、突然変異の生成頻度を高める修復欠損、細胞分裂促進に働く遺伝要因および免疫不全要因をとりあげた。遺伝子および発がん要因の種類によって促進されやすい場合と促進されにくい場合のあることが確実に示された。たとえばヒトでは紫外線によるP53遺伝子の突然変異は修復欠損があると著しく促進される。APEX修復欠損遺伝子は活性酸素によるDNA損傷への関与が著しい。染色体再構成や遺伝子の欠失はDNA鎖切断の修復過程と関係が深い。これらの結果から、多段階発がんの各過程を構成する遺伝子の働きにそれぞれ特有の促進要因が作用することが示され、多段階発がんのより詳細な解析には各遺伝子の構成、発現、調節などの理解が重要であることがわかった。たとえば紫外線によって生じた腫瘍のがん関連遺伝子の突然変異の比較では、マウスではras遺伝子がp53遺伝子よりも高頻度に変異しているのに対し、ヒトではras遺伝子にはきわめてまれにしか変異がみられず、p53遺伝子の変異が高頻度に検出できた。これはヒトとマウスの修復系の違いを反映していると考えられ、多段階の各段階に働く遺伝子の役割がヒトとマウスで異なることを示唆した。同様なことはscidマウスのような免疫不全と放射線感受性、白血病誘発性との関連がヒトでは確認しにくいことなどにもみられた。このように、本研究は多段階発がんの理解には各段階の遺伝子の発現を発がん原の種類、修復の型などに注目して詳細に解析しなければならないことを明らかにした。
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