研究概要 |
我々はこれまでに、ラット及びマウスのPP2CαcDNA、およびマウスPP2Cβの5種類のイソフォーム(PP2Cβ-1,-2,-3,-4および-5)をコードするcDNAを単離し、それらの解析を行ってきた。その結果、PP2CαおよびPP2Cβは異なった遺伝子産物であること、およびPP2Cβの5種類のイソフォームは、単一のpre-mRNAからの選択的スプライシングによって生ずることが判明した。それらのスプライシング部位は同じであり、スプライシングの結果生ずる5種類のイソフォームは、C末端の十数個のアミノ酸配列のみが異なっていた。 ノーザン解析の結果、PP2CαおよびPP2Cβ-1のmRNAシグナルは、マウスの諸臓器に普遍的に発現していた。これに対し、PP2Cβ-2は脳と心筋のみに、またPP2Cβ-3,-4および-5は精巣と小腸のみに選択的に発現していた。特異抗体を用いたマウス脳の免疫組織染色の結果、PP2CαおよびPP2Cβ-1はニューロンとグリアの両方に発現しているのに対し、PP2Cβ-2はニューロンにのみ発現していることが明らかとなった。また、マウス胚性幹細胞や胚性始原生殖細胞では、PP2Cβ-1のmRNAシグナルが強いのに対し、PP2Cβ-3,-4および-5のシグナルは極めて低レベルであった。これに対し、精巣では、それらのシグナルの強度が逆転していた。さらに精巣のin situハイブリダイゼーションの結果、PP2Cβ-3,-4および-5のシグナルは、精細管内部の生殖細胞に検出された。以上の結果から、これらのイソフォームは精子形成の制御に関わっている可能性が示唆された。
|