研究概要 |
私達はヒト膠芽腫に血小板由来細胞増殖因子(PDGF)のα‐レセプター(α-PDGFレセプター)が過剰発現していることを見つけ、この過剰発現がα-PDGFレセプター遺伝子の細胞外ドメインの免疫グロブリン様ドメインの一部をコードするエクソンを欠失した遺伝子が増幅したものであることを明らかにしてきた。本研究ではα-PDGFレセプター遺伝子をマウスに導入することにより、構造変異をもったレセプターを過剰発現するマウスを樹立すると共に、脳腫瘍を高頻度で発症するマウスも樹立することを目的としている。 ヒトα-PDGFレセプター遺伝子の全構造を決定した結果、ヒトα-PDGFレセプター遺伝子は全長全長65kbで、23のエクソンより構成されることが明らかになった。細胞外の免疫グロブリンドメイン、細胞膜ドメイン、カイネースドメイン、およびカイネースドメインを隔てる介在ドメインはα-PDGFレセプターのファミリーであるc-kitとc-fmsに類似したの遺伝子構成を有していた。α-PDGFレセプター遺伝子のmRNA転写開始点の5′上流域にはTATA box配列はなく、CCAAT boxが存在した。また、Sp1,Ap-1,Ap2,Oct-1とOct-2の結合部位が見つけられた。5′上流域をルシフェラーゼ・レポーター遺伝子に結合し、NIH3T3細胞に導入することにより、プロモーター活性に必要な最小限の配列を決定した。脳腫瘍を高頻度で発症するトランスジェニックマウスを樹立するために、正常型と部分欠失したα-PDGFレセプターをコードするミニ遺伝子を調製し、マウスの受精卵に導入し、これらのレセプター遺伝子を持つトランスジェニックマウスが生まれてきている。
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